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逃がした魚(柚火)
2008-01-06
釣れやすく見える目の前の稚魚を、育って美味そうになるまではと見守るつもりだった。しかしひょんなことから、漏れてしまった本音。今は表向きだ本性だという問題ではない。
「柚木…?なに言ってるの?俺は…柚木が好きだ」
「おまえの好きとは違うんだよ。俺はおまえを友達だなんて思えない。」
「…どういう…」
やっぱりというかなんというか。友達と思わないと言ったあたりで目の前の奴はひどく傷ついた顔をした。
俺はいっそ吐き出してしまえと思った。
後のことは考えないまま、まだ幼い相手は育っていないだけだと思っていた。
「俺は、おまえを愛してるんだ。友達なんて生ぬるいものは嫌だ。…なるなら…恋人。」
だから気づかなかった。感情に溺れて、見えていなかった。
もう一つの可能性。
「なに言ってんの…柚木…?俺たち…男同士だよ…?」
おまえは震えていた。
戸惑って、嫌悪さえ見えた。
友達という繋がりが崩れる音と、まるで違う生き物を見るような目をしていた。
ああ。言わなければ。
言わなければ崩れることはなかったのだろうか。
言わなければ俺が壊れてしまうような気がして。
考えていなかった。おまえに嫌われるという未来。…今。
考えてみれば簡単なことだったのに。
普通にロマンチックな恋愛を夢見るおまえが、それ以外を考えることなんかないのに。
それすらわからなくなっていて。
馬鹿だな。おまえが誰を愛していようと、心に押し留めて、見守っていればよかったんだ。
そうすればずっとずっとそばにいられただろうに。
おまえを置いて逃げた俺の手には、
釣り竿さえなくなった。

