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ラブシーンは最大の敵

 2007-12-14
アイドル事務所〜Seiso〜

今回は月森ちゃんがドラマに初挑戦です。

役作りに他の共演者とのチームワーク。

そしてラブシーン。

月森ちゃんには障害だらけです。

応援してやってください。



『俺はもうお前のことしか見えない。たとえ世界中を敵に回しても、お前はこの手で守る。』

『梁・・・。だが、俺は・・・・君を傷つけたくない。だから俺を置いて行ってくれ。俺をあ・・・・・、・・・・・・・・ぁ・・・・・・・、ぁぃ・・・・・・・・・・・』



『カーットぉ!!!!・・・ちょっと月森君!?一番良いシーンなんですけど?』


『・・・・・・・・・すまない・・・・』
『ったく、これで何度目だよ。ちょっとは進歩しろ。俺だってお前にこんな台詞何度も言いたくねーよ。』
『くっ・・・・、解っている!!』



アイドル事務所〜Seiso〜



本日は『禁断のダイヤモンド』という、敵同士の禁断の恋がテーマのドラマを撮影中だ。

アクションものなのだが、一番のラブシーンが見せ場。現在その見せ場の大事なシーンで俺が台詞を言えない為、テイク4の状態だった。


次に行かなければならないのは重々承知だし、これ以上皆に迷惑はかけられない。
だが、この内容がどうだろう。そもそも無理なのではないだろうか。

『俺がこの恋人役は無理があるのでは・・・・』
『ちょっと、月森君?君のそのクールさと美貌がこの役にどんぴしゃなんだからさ、今から変更は無理だよ?』
『だが・・・何故男同士でこんな・・・』
『台本から文句つけんのかよ。どうしようもねぇな。お前そんなこと言ってると役来なくなるぞ。』


根本的に何か間違っているような気もするが、土浦の言うことはもっともだろう。
俺だって役と割り切ってラブシーンや・・・キス・・・・シーンくらい・・・・とは思うのだが。


相手が。

相手が土浦だと言うのが問題だ。

土浦相手に愛の言葉を囁くということ事態、心がとても拒否をする。



第一普通に女性相手でも愛の言葉が言えるかというと、

・・・・・・それも自信があるとは言えない。



しかも、この作品。わざわざ俺たちのために脚本を書いたらしく、名前は本名を使っていた。

だから余計にやりにくい。



ともかく、この状況はどうにかして乗り越えなければならないだろう。

課せられた使命、俺が成長するための試練だと思えば、

・・・・・・なんとか進める気がする。



『すみません、もう一度お願いします。』

天羽さんや周りのスタッフの方に頭を下げる。

『もう後は無いぜ。』

きつい一言だが、当然でもある。土浦にも迷惑をかけていることは確かだ。

『あぁ。』

彼の真剣な瞳に俺の瞳を合わせ、俺の決意を示す。



今だけは。試練を乗り越えるために、君を好きだと暗示をかけても良い。

だが、人を好きになったことの無い俺が、恋というものを表せるのだろうか。



『じゃあ、テイク5いきますよ〜、5秒前、4、3、・・・・』



だが、やってみるしかない。今、土浦は俺の・・・・・・好意を寄せる人・・・だ。



カメラがまわる。土浦の息を感じて、演技が始まる。



俺は怪我を負っていて、彼と俺はそれぞれの組織から追われていた。

壁に背を預けて座り込み、俺は傷口を押さえる。



彼は俺を心配して、覗き込み、俺の前髪に触れた。



『俺はもうお前のことしか見えない。・・・・・たとえ世界中を敵に回しても、お前はこの手で守る。』



俺は、はぁはぁと荒い息をしながら、彼の強い瞳を見上げる。

彼の瞳は決心と、覚悟と、・・・・・・なにか。



なにかを感じた。



安心するような、胸がじんとするような、



なにかを。



『・・・』



土浦が急に片手で俺の右手を握った。

先ほどの演技では無かったので、俺は驚く。



そこで、俺が考え込んで一瞬どこかに行っていた事が解った。



・・・・・・・・呑まれた?・・・・・俺が?


彼は咄嗟に俺を引き戻すために、手を握る演技を追加したのか?


・・・・・・解った。君の救ってくれたこの勢いを、無駄にはしない。




俺は彼の手を胸辺りまで持ち上げ、両の手で包み込む。


それだけで気恥ずかしさが襲うが、・・・・・俺は今・・・・



君が。

君のことが。



『梁・・・。だが、俺は・・・・君を傷つけたくない。だから俺を置いて行ってくれ。』



君の事を思う。

君の無事を願う。



俺よりも。

君が・・・・・・、俺が好きな君が。

生き延びてくれることを・・・



『俺を・・・・・・、愛しているならばっ・・・・・。』



・・・・・・言った。


・・・・・・言えた・・・・・・。



あれほど何度やっても言えなかった言葉が、

すんなりと感情に乗って出てきた。



俺の中で達成感が満ちる。



すると土浦が俺の手を引っ張り、彼の腕の中に入れられる。

そのことで、俺はまだ終わっていないことを気付かされた。



土浦の雰囲気が先ほどとは打って変わり、俺を強く抱きしめる。



『・・・・・・馬鹿言ってんじゃねぇよ。置いていけるかっ・・・・』



彼はぐいと俺の腕を掴んで、俺と瞳を合わせた。



『俺はお前が一番大事なんだ・・・・。・・・・死んだって離すもんかっ・・・・!!』



怒っているかと思った土浦の瞳は、泣きそうに見えた。

今までの演技とは違う迫力を感じる。




強く、強く抱きしめられて、


苦しくて息ができないほど抱きしめられて。


彼の苦しさもこんなものだろうかと思った。



役の彼なのか、本当の彼なのか解らなくなって、

俺は本当に彼に愛されているような感覚に落ちる。



彼に顎をなぞられ、上を向かされて、

俺は彼の瞳を見つめた後、抵抗なく自然に瞳を閉じた。

唇に柔らかいものを感じて、そういえばファーストキスだと気付く。



何も知らない。どうしたらいいのだろう。



この役は『恋人同士』であり、俺のように初めてではないだろう。軽いものでOKがでるとは思えない。



戸惑っていると、空気で察したのか、

彼が俺の腕を捕らえて、首に回すように導いた。



頭を押さえられ、唇を当てるだけだったキスが、

俺の唇を舌でノックされ、少し開いた所で奥まで容赦なく入られる。



『んっ・・・・』



苦しくて、柔らかい異物が口内を動くのがなんだか恥ずかしい。

変な声も出てしまい、俺はパニックを起こした。



すると、土浦が俺の頭を撫で、背中を撫で上げる。



『んんっ・・・・ふんっ・・・』



何だか暖かくて、優しくて、

柔らかくて、痺れてきて、

背中がぞくぞくとして、口から熱い息が上がってきた。



『はっ・・・んっ・・・ふ、・・』



頭の中の酸素が少なくなり、朦朧とする中で、

夢中でキスというものを感じる。



熱い。

口の中も、彼の舌も、

俺の身体も、頭の中も。



強く彼の腕に抱きしめられて、

全く別の世界にいるような浮遊感。



息継ぎが上手くできず、苦しくなってくると、

土浦がやっと唇を離した。



『んっ、は・・・。・・・解ったか。勝手に死ぬなんて考えんな。・・・・お前は俺だけ信じてろ。』

『・・・・梁・・・。』



まだ朦朧としている。

出てきた彼の名を呼ぶ台詞は、熱い息にまみれていて、

俺の声とはとても思えなかった。



台詞・・・・次の台詞は・・・・・



頭が上手く動かないため、長かったはずの台詞が出てこない。



俺は土浦を自分から抱きしめた。

彼の身体に腕を回し、その胸に顔をうずめる。



あぁ、台本に無いことをしている自覚はあるが、

今はアドリブも許される気がする。



こんなに愛しい人に思いをぶつけられたなら、

俺だったら言葉なんて出ないのではないだろうか。



『・・・・・蓮っ・・・』



土浦が聞いたことの無いような甘く優しい声を出して俺を抱きしめ返した。



どくん・・・・



俺の鼓動が強く早く鳴る。



恋人役として何度か土浦に名を呼ばれたが、

今の声は聞いたことの無い響きだった。



彼が恋人だったなら、こんな風に愛してくれるのだろうか。



『カーットぉ!!オッケーだよ、2人とも!!凄いよ、最高の出来栄えだね!!いや〜見ててこっちまで引き込まれちゃったよ。』



天羽さんの声でやっとOKが出たことに気付いた。

俺は・・・・・



ぬくぬくと何だか気持ちがよくて、頭が上手く回っていない状態が続いている。

呆けてる俺の耳元に、低くて甘ったるい声が聞こえた。



『そんなに気持ち良かったか?俺とのキス。なんならもっかいしてやろうか?』



ぞくっと背筋を何かが通り抜ける。

俺は右の耳を押さえて身体を離した。



何故。

何故だ・・・・もう抱きついている必要は無いのに・・・



俺はっ・・・・

彼と・・・・・

キス・・・・を・・・・



さっきの熱い感覚と彼の舌の感触を思い出し、

俺は顔だけでなく耳まで熱くなった。



あれだけ出来るわけが無いと思っていた、彼とのラブシーン。

さきほどの自分が信じられない。



あれは俺じゃない。

きっと役に乗っ取られたんだろう。



そうでなければ・・・・



『っ・・・、役でももうお断りだ!!』

『そうか?・・・気持ち良さそうにしてたくせに。すっげーエロい顔だったぜ?』

『っ・・!!・・・知らない!!』



『な〜んでそう喧嘩になっちゃうのかな〜、リアルでは。いや、今の感じでいけるんだったら最初の方酷いから撮り直そうと思うんだけど、・・・・・表に出ちゃうんだよね〜。』



俺たちの様子を見て天羽さんがため息をつく。



撮り直し!?

また最初からやるというのだろうか・・・



止めてほしい。

最初の方にも色々と難関があったはずだ。



恥ずかしくて死にそうだ。



『それなら天羽さん、ためしに恋人期間をリアルの状態でもやってもらうというのはどうかな?』

『『柚木先輩!?』』



俺と土浦の声が重なる。



『あ〜、それいいですね。元から直していけば、もっと雰囲気甘くなるかも。それじゃ、2人とも今日から撮影が終わるまでの期間、仮恋人期間ね!!』



『『はぁ!?』』



当の本人を全く無視で話が進んでいる。信じられない。



というか・・・



『願い下げだっ・・・』

『そりゃ、こっちの台詞だ!!』



『だ〜め!!監督命令!!Seiso関係者全員に見張ってもらうよう言っとくから、頑張ってよね!これもいい作品を撮る為なんだからさ!!』



『なっ・・・・』

『マジかよっ・・・・』



俺たちの抵抗も虚しく、

このドラマの撮影期間中、土浦・・・・・と、

恋人期間を強制的にやらされることになってしまったのだった・・・・・・・。



本当に信じられない。

役のためとはいえ・・・・あの土浦と。



恋人・・・・・・・・・・・



そう思った瞬間、彼の強い腕と、おかしくなるほど熱いキスを思い出した。

俺はそれを打ち消そうと頭を振る。



あれは。

あれは違う。俺じゃない。




せっかく一番の難関を突破したと思ったのに。

一難去ってまた一難。




俺はこれから来るであろうの苦悩の日々を想像し、頭を抱えるのだった・・・。





難関だらけの月森君や管理人への応援お待ちしてます〜。






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