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真っ赤な薔薇(土加)
2007-12-11
今回はあれですよ。ちょっと浮気して土加で。前作そんな話が出てたので、そんな雰囲気になってみたり。
爽やかな風。風に乗って届く歌声。
落書きのある秘密の場所で、青空を見上げていた。
ガチャ。
内緒のはずのこの場所に、訪れた招かれざる者。
ちょっと今一人になりたかったんだけどな・・・。
『お前は何かというとここに来るんだな、加地。』
『土浦。君も日向ぼっこ?他の人には・・・』
『言ってねぇよ。』
ならいいけど、と微笑んで。
彼は僕の隣に寝転んだ。
・・・・・・何してるの?土浦。誘ってるの?
隣に寝転んで仰向けになった彼の、動きや寝転ぶ音、
彼の起こした微かな風にも反応する僕は虚しいね。
『土浦、あのさ。ちょっと聞いてくれる?』
『ん?あぁ、別にいいけど。』
『僕ね、この間生でナイチンゲールっていう歌を聴くことができたんだ。凄かったよ、美しい本当に鳥の囀るようなソプラノで。』
『へぇ・・・・、ナイチンゲールって・・・どんな話だったっけか・・・・』
土浦は僕が落ち着く低いテノールで聞き返す。
『2つほどあるよ。アンデルセンの中国の話と、薔薇とナイチンゲールの話。僕は薔薇の話のほうが好きだな。』
『んじゃ、そっちを聞かせてくれ。』
『了解。・・・ナイチンゲールはね、恋に憧れ、恋の歌を歌っていた。ある日そのナイチンゲールが歌う森に、哲学が好きな理論家の男がやって来て、恋をするんだよ。』
男は悩んでいた。
何故なら彼は恋をしていたから。
愛しい女性がダンスで踊る条件に、赤い薔薇が欲しいと言ったから。
けれど男は紅い薔薇を手に入れられなくて、苦しんでいた。
大好きな哲学では解決できないほど、恋に悩んでいた。
ナイチンゲールはその男の恋する姿を見て、恋を知り、
それを教えてくれた男に恋をした。
男はそんなことは気付かず、鳥は恋も知らないくせにのん気に恋の歌を歌いやがってとナイチンゲールに恨めしく言い放つ。
ナイチンゲールはそれでも男の恋は素晴らしくて、応援したいと思った。
トカゲに一本の薔薇のために悩むなんて馬鹿げていると言われても、
恋はなんて美しいのだと羽を羽ばたかせ、薔薇のところに行った。
ナイチンゲールは薔薇のところについたが、その薔薇は白い薔薇だった。
『私の兄のところへ行けば多分欲しがっているものがもらえる。』
白い薔薇は言った。ナイチンゲールは言われた場所に赤い薔薇を探しに行く。
次にあった薔薇は黄色だった。同じように黄色の薔薇の兄の場所を教えてもらい、
ナイチンゲールは飛んでいく。
次にあったのは赤い薔薇だった。
けれど、寒さで霜が降り、もう今年は赤い薔薇は咲かないと薔薇は言う。
『お願いします。どうしても愛しい人のために、赤い薔薇が欲しいんです。』
『たった一つだけ方法がありますが、それはあまりにも酷い方法です。』
『どうなっても構いません。あの人が喜ぶなら、私はどうなっても。』
『ならば、月夜の晩、愛の歌を歌いながら、私の棘を貴方の心臓に刺しなさい。そうすれば、音楽の力と貴方の心臓の血で、私の薔薇は赤く咲くでしょう。』
ナイチンゲールは喜んで男に報告に行く。
けれどやはり男は何も知らずに、鳥には誰かのために自分を犠牲にすることなどないのだろうと言った。
ナイチンゲールはその夜、月の見守る中、
愛の歌を何曲も何曲も歌い続け、
薔薇の棘は心臓に突き刺さり、
けれどもナイチンゲールは歌い続ける。
薔薇は始め、白い薔薇を咲かせた。
しかし、ナイチンゲールの心臓の血で、みるみる赤くなっていった。
ナイチンゲールがいっそう高らかに歌い上げ、その歌が終わった時、
真っ赤な薔薇が咲いていた。
横には動かなくなったナイチンゲール。
その真っ赤な薔薇は男の部屋の窓の前に咲いていた。
朝、男はそれを見つけ、大急ぎで摘んで女のところへ持っていく。
けれど、女は言った。
『その赤い薔薇、私のドレスに似合わないからやっぱりいらないわ、それよりも素敵な宝石をくれる人がいるの。その人と踊るわ。』
男は打ちひしがれ、恋なんてするのはやはり馬鹿げていると真っ赤な薔薇を投げ捨てた。
真っ赤な薔薇は道に落ちて、馬車に踏まれた。
そして、男はまた哲学に戻っていった。
『っていうお話だよ。報われないよね。』
『そうだな・・・・。そのナイチンゲールの歌は命をかけた恋の歌だったわけか・・・』
『うん。何か僕もその場で涙が止まらなかったよ。』
僕に重なるようで。
報われない恋のナイチンゲール。
『ねぇ、土浦。月森のとこに行ってあげなくていいの?今日は向こうの屋上で練習してるみたいだけど。ナイチンゲールみたいに気付いてあげないと、折角の愛の歌も報われないよ?』
『・・・・なんでそこで月森が出てくるんだよ・・・。』
『応えてあげないと死んじゃうよ?・・・・・ナイチンゲール・・・』
僕は空が滲んで見えて、目を伏せる。
遠くでヴァイオリンが愛の歌を歌ってる。
君に相応しい人。
君の行くべきところ。
すると、横から音がして、ふいに瞼の裏が暗くなった。
不思議に思って目を開けると、降りてくる口付け。
少しの間触れた後、離れて行って、熱い視線とぶつかった。
『応えないと・・・・死んじゃうんだろ。』
何でソプラノの歌声を聴いたとき、涙が出たんだろう。
あぁ、そうか、同じだから。
僕がナイチンゲールと重なるから。
報われない報われない。
ずっとずっと見てるだけ。
恋する貴方を見てるだけ。
けれど・・・・
『なんで・・・・・・?』
『恋は哲学や理屈じゃ計れないんだろ。』
そう言って彼は笑った。
優しく、僕の真っ赤な薔薇を受け取って。
落書きのある秘密の場所で、青空を見上げていた。
ガチャ。
内緒のはずのこの場所に、訪れた招かれざる者。
ちょっと今一人になりたかったんだけどな・・・。
『お前は何かというとここに来るんだな、加地。』
『土浦。君も日向ぼっこ?他の人には・・・』
『言ってねぇよ。』
ならいいけど、と微笑んで。
彼は僕の隣に寝転んだ。
・・・・・・何してるの?土浦。誘ってるの?
隣に寝転んで仰向けになった彼の、動きや寝転ぶ音、
彼の起こした微かな風にも反応する僕は虚しいね。
『土浦、あのさ。ちょっと聞いてくれる?』
『ん?あぁ、別にいいけど。』
『僕ね、この間生でナイチンゲールっていう歌を聴くことができたんだ。凄かったよ、美しい本当に鳥の囀るようなソプラノで。』
『へぇ・・・・、ナイチンゲールって・・・どんな話だったっけか・・・・』
土浦は僕が落ち着く低いテノールで聞き返す。
『2つほどあるよ。アンデルセンの中国の話と、薔薇とナイチンゲールの話。僕は薔薇の話のほうが好きだな。』
『んじゃ、そっちを聞かせてくれ。』
『了解。・・・ナイチンゲールはね、恋に憧れ、恋の歌を歌っていた。ある日そのナイチンゲールが歌う森に、哲学が好きな理論家の男がやって来て、恋をするんだよ。』
男は悩んでいた。
何故なら彼は恋をしていたから。
愛しい女性がダンスで踊る条件に、赤い薔薇が欲しいと言ったから。
けれど男は紅い薔薇を手に入れられなくて、苦しんでいた。
大好きな哲学では解決できないほど、恋に悩んでいた。
ナイチンゲールはその男の恋する姿を見て、恋を知り、
それを教えてくれた男に恋をした。
男はそんなことは気付かず、鳥は恋も知らないくせにのん気に恋の歌を歌いやがってとナイチンゲールに恨めしく言い放つ。
ナイチンゲールはそれでも男の恋は素晴らしくて、応援したいと思った。
トカゲに一本の薔薇のために悩むなんて馬鹿げていると言われても、
恋はなんて美しいのだと羽を羽ばたかせ、薔薇のところに行った。
ナイチンゲールは薔薇のところについたが、その薔薇は白い薔薇だった。
『私の兄のところへ行けば多分欲しがっているものがもらえる。』
白い薔薇は言った。ナイチンゲールは言われた場所に赤い薔薇を探しに行く。
次にあった薔薇は黄色だった。同じように黄色の薔薇の兄の場所を教えてもらい、
ナイチンゲールは飛んでいく。
次にあったのは赤い薔薇だった。
けれど、寒さで霜が降り、もう今年は赤い薔薇は咲かないと薔薇は言う。
『お願いします。どうしても愛しい人のために、赤い薔薇が欲しいんです。』
『たった一つだけ方法がありますが、それはあまりにも酷い方法です。』
『どうなっても構いません。あの人が喜ぶなら、私はどうなっても。』
『ならば、月夜の晩、愛の歌を歌いながら、私の棘を貴方の心臓に刺しなさい。そうすれば、音楽の力と貴方の心臓の血で、私の薔薇は赤く咲くでしょう。』
ナイチンゲールは喜んで男に報告に行く。
けれどやはり男は何も知らずに、鳥には誰かのために自分を犠牲にすることなどないのだろうと言った。
ナイチンゲールはその夜、月の見守る中、
愛の歌を何曲も何曲も歌い続け、
薔薇の棘は心臓に突き刺さり、
けれどもナイチンゲールは歌い続ける。
薔薇は始め、白い薔薇を咲かせた。
しかし、ナイチンゲールの心臓の血で、みるみる赤くなっていった。
ナイチンゲールがいっそう高らかに歌い上げ、その歌が終わった時、
真っ赤な薔薇が咲いていた。
横には動かなくなったナイチンゲール。
その真っ赤な薔薇は男の部屋の窓の前に咲いていた。
朝、男はそれを見つけ、大急ぎで摘んで女のところへ持っていく。
けれど、女は言った。
『その赤い薔薇、私のドレスに似合わないからやっぱりいらないわ、それよりも素敵な宝石をくれる人がいるの。その人と踊るわ。』
男は打ちひしがれ、恋なんてするのはやはり馬鹿げていると真っ赤な薔薇を投げ捨てた。
真っ赤な薔薇は道に落ちて、馬車に踏まれた。
そして、男はまた哲学に戻っていった。
『っていうお話だよ。報われないよね。』
『そうだな・・・・。そのナイチンゲールの歌は命をかけた恋の歌だったわけか・・・』
『うん。何か僕もその場で涙が止まらなかったよ。』
僕に重なるようで。
報われない恋のナイチンゲール。
『ねぇ、土浦。月森のとこに行ってあげなくていいの?今日は向こうの屋上で練習してるみたいだけど。ナイチンゲールみたいに気付いてあげないと、折角の愛の歌も報われないよ?』
『・・・・なんでそこで月森が出てくるんだよ・・・。』
『応えてあげないと死んじゃうよ?・・・・・ナイチンゲール・・・』
僕は空が滲んで見えて、目を伏せる。
遠くでヴァイオリンが愛の歌を歌ってる。
君に相応しい人。
君の行くべきところ。
すると、横から音がして、ふいに瞼の裏が暗くなった。
不思議に思って目を開けると、降りてくる口付け。
少しの間触れた後、離れて行って、熱い視線とぶつかった。
『応えないと・・・・死んじゃうんだろ。』
何でソプラノの歌声を聴いたとき、涙が出たんだろう。
あぁ、そうか、同じだから。
僕がナイチンゲールと重なるから。
報われない報われない。
ずっとずっと見てるだけ。
恋する貴方を見てるだけ。
けれど・・・・
『なんで・・・・・・?』
『恋は哲学や理屈じゃ計れないんだろ。』
そう言って彼は笑った。
優しく、僕の真っ赤な薔薇を受け取って。
