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紅き衣の蝶の一生(土月SS)

 2007-11-24
誤爆して管理人自ら2000という素晴らしい数字を踏んでしまいました・・・・。やっちまいました、バカだなぁ…

っつーことで折角の2000ですので、土月SSをお届けします。

またしてもパラレルですが。

大丈夫な方だけお付き合いください。遊郭ものです。
その大輪の花の襖の先には、この世の者とは思えないほどの美しい蝶がいた。

真っ赤な血のように艶やかな着物、紺の地に金細工の帯。

裾からチラリと見える真珠色の脚、頭には金のシャラシャラと飾りの付いた簪。
結い上げられた蒼い髪は湖の水の色。そしてこちらを眺める大きな瞳は月のような金色に光る。

整った顔立ち。細い柳眉に鼻筋、そして柔らかく弧を描く紅い唇。

長い睫を涙で濡らし、きちんと着てあった真っ赤な着物を乱れさせて舞われたら、この世に敵う男がいるだろうか。

堕ちない男がいるだろうか。

(こんな女は見たこと無い…)

『そんなところに立っていないで、こちらへ来てください。』

くす、と妖艶に笑い、蝶は言う。

今日のお客はこういうところにあまり慣れていないようだ。
昨日の酔っ払いの手癖の悪いお得意様よりずっと良い。

『貴方のお名前は?』

『土浦…梁太郎。貴女は?』

『……蓮。』

その青年は蝶とたわいもない話をして、全く触れる様子がない。

こういう場所に来ながら何とも初な青年だと、蝶は誘いをかけた。

『土浦様、私には…魅力が無いのでしょうか…。』

上目遣いで襟元を少し緩めながら、物欲しそうに見上げる。
全てここで身に付けた生きる術。

これで手を出さない男はいない。

蝶は知っていた。

(この純粋で真っ直ぐな青年になら抱かれてみたい…)

けれどその思いは裏切られる。

『体…、今日ぐらい大事にしとけ。』

青年は首を振りそう言って、蝶の乱れた襟元を合わせた。


蝶の指名は抱かれること。毎日毎日耐えてきた。

真っ赤な着物を纏った日から、その定めを覚悟した日から、
蝶は男であって男でなくなり、

人であって人でなくなった。


蝶は初めて着物を解くことなく、抱きしめられるだけの一夜を過ごした。

青年の帰り際、また来てくれるかと裾を掴めば、

優しく深い接吻と言う名の愛を示される。


花魁は、

躯は許しても、

心を売ることなかれ。

笑顔を見せても、

涙を見せることなかれ。


赤い赤い鎖を纏った蝶は、

その日初めて暖かい涙を流した。

貴方のくれた優しさが痛い。

温もりが心に痛い。

癒されることは望まない。

貴方だけの私が欲しい。

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