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その音色に誘われて4

 2009-04-28
先に喧嘩ふっかけて来たのは、頭より力頼りな3人のバカそうなヤツらの方だった。

俺はゲーセン内でたまたま会った友人の、レーシングプレイを横で立って見てたんだけど、
通路いっぱいに、3人で広がって歩いて来た奴らが、俺の肩に背負っていたヴァイオリンに思いっきり当たって来やがった。

狭い通路で3人並んでくるなんて小学生か。

というか、俺はヴァイオリンに当たられて、本能的に物凄くそいつ等を睨んだと思う。

楽器は自分の体より大切、と思うのは演奏家として当然だろ。
まあ体や健康も演奏家には大事なんだけど。

んで、ガンつけただの、ゲーセンに邪魔なもん持ち込む俺が悪いだの言われて、喧嘩体勢になったというわけだ。

「桐也!お前は悪くない。言うこと聞く必要なんか…」

まだ後ろで友人が反対してる。

だって言うこと素直に聞いといた方が、無駄に時間食わずに済みそうだろ?

俺は友人にヴァイオリンを預け、さっさと土下座することにした。

「…よろしくな。」

コイツだけは無傷で頼む、勝手にそう思いながら友人を見上げた。

友人は俺の表情を見て、何か感じたらしく、頷いた。

…大事なもんは預けたし、俺だけなら多少やられてもなんとかなる。

しゃがむ直前に、高校生どもが俺を踏みつけようと足を上げるのが見えたけど、俺は覚悟して目を伏せ、土下座する。

―ように見せかけて、片膝をつき、片膝を曲げて、両手の指先だけで地面を支えた。

「すいませんでし…」

曲げた左足と、地面につけた右足の足先に体を押し出すように力をかける。言わばクラウチングスタート。
言葉と同時に視線を上げて、敵に突っ込んだ。

「…たっ!!」

「はぁっ!?」「なっ!?」

目の前で足を中途半端に上げていた高校生2人の間を目掛けて、俺は渾身の力でタックルをかます。

不安定な格好をしていた2人はバランスを崩し、音を立てて2人とも無様に尻餅をついてすっころんだ。

「んだと、てめっ…」

転んだ奴らの情けない声をBGMに、俺は2人の間をすり抜け、道路の方に出る。

「行くぞ!」

俺は背中の方に向かって声を張り上げた。

ヴァイオリンを持った友人も、さっき俺が走り出した瞬間、気づいたんだろう。タックルする直前に俺の後方で一瞬遅れて走り出した気配がした。

倒れているやつらはまだショックで起き上がれない。今のうちだ、と俺が振り返った時だった。



振り向いた俺は、予想しなかった展開を目の当たりにした。

もう一人、離れたところで見ていた高校生が、俺の友人を捕まえていたのだ。

3人の中でも一番弱そうな、下っ端的な奴だったから、あまり気にしていなかったのが失敗だった。

友人が必死にヴァイオリンを守ろうとしている姿が、俺の瞳に焼き付いた。

だが、今の俺の距離では助けに行くには間に合わない。

「くそっ…離せ!…桐也、悪い、捕まった…っ」
「う、動くなよ!この楽器がどうなってもいいのか!」

ヴァイオリンを俺の弱点ととったのか、中身が高価なもんだとも知らないで、下っ端が言う。

友人が頑張っているが、今にも下っ端にヴァイオリンが奪われそうだった。

…のやろっ!!

「ざけんな!手出してみろ、承知しねぇぞ!!」

叫んだ俺は、ヴァイオリンと友人を助けるために、走り出す…

つもりだったが、体は前に動かなかった。


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