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〜ブルーエンジェル〜真実の愛

 2009-04-24

屋上の扉を閉めると、さわさわと春の風の匂いがした。
目の前にはフェンスに寄りかかる君。

「何の用だろうか。」

放課後、俺は突然屋上に呼び出された。
一緒に練習したい、とも何とも聞いてはいない。

「何の用って・・・、お前・・・」

振り返りながら、君は眉根を寄せた。

・・・俺は何か気に触ることを言っただろうか。

「特に何も言っていなかったから、2人で練習でもするつもりかと思ったのだが、・・・違ったのか。」

俺は近くのベンチに、ヴァイオリンケースと鞄を置いた。
すると、荷物を置くために背を向けていた君に、後ろから捕まった。

「・・・忘れてんのか。」

右耳に吐息交じりの低音が響き、身体の芯がぞくりと震える。

・・・忘れている?・・・何を・・・?

土浦と約束でもしていただろうか。
だが、そんな記憶はなかったし、スケジュール帳にも特に書いてはいなかった。

「・・・何がだ・・・?」

記憶に無いものはどうしようもなく、君に嫌われそうな気がして不安になった。

君を振り返ると、困ったような、だが口元は優しく、何とも言い難い表情をしている。

「・・・土浦・・?」

「今日、お前誕生日だろ。」

君は俺を後ろから抱きしめながら、優しい瞳でそう言った。

「・・・・・、・・・・・あぁ、そうだっただろうか。」

頭の中が真っ白になりながら、俺は今日の日付を思い出す。
4月24日、確かに俺の誕生日だ。

「そうだっただろうか、って・・・お前自分の誕生日忘れるなよな。」

苦笑して、君のぬくもりが離れていく。
少し寂しくて、俺は君の方へ向き直った。

「学校で祝われる事などなかったから。」

そう告げると、「なら、一番乗りだな。」と君は嬉しそうに言った。
君はもう一つのベンチに移動し、自分の荷物を探る。
その荷物の影から、白いビニール袋を手にして、こちらへ戻ってきた。

「ん。やるよ、お前に。」

目の前に差し出されたビニール袋には、鉢植えの青い花が入っているようだった。

「俺に・・・?」

俺は受け取り、そっと白いビニールを開いてみる。
目の覚めるような鮮やかな青い花びら。花弁は5枚で、中央のおしべやめしべの部分は白い。
花びらはほんの少し先が尖っていて、小さな花が密集して咲いている、可愛らしい花だった。

「あぁ。誕生日だから。前にお前に花貰ったことあったし、そのお返しだ。」

君は照れたように、少し斜めを向いてそう言った。

・・・俺は、そんな風に照れる君も、なんだか好きだ。

そう思いながら、手の中の花を眺めた。
すると、鉢に札が差してあることに気付く。

「・・・・アンチューサ・・・?聞いたことの無い花だな。」
「あぁ、アフリカ原産の花らしい。何か湿気と暑さに弱いらしいから気をつけろよ。日当たりの良いとこ置いて、水はあまりやりすぎない方がいい。寒さには強いみたいだけどな、お前みたいに。」

君は、照れながらもしっかりと育て方を教えてくれる。
花など育てたことがない俺のために、色々聞いてきてくれたのだろう。

・・・・それはいいが・・・

「俺みたい・・・?」
「あぁ。お前寒いの強いだろ。夏とか暑いの苦手だけど。・・・・・・後、そいつ、お前の誕生花だから。」
「・・・・誕生花・・・?」
「知らないのか?なんか誕生日ごとに毎日花が誕生花として何種類か振り分けられてるんだ。」

あまり花にはそこまで興味はなかったため、聞いたことくらいしかなかったが、
これが俺の誕生花だ、と言われると、何だかまた違って愛着が持てる。

俺は、青色の鮮やかな花を眺めながら、わざわざ土浦が誕生花を探して買ってきてくれた事を嬉しく思った。
頬は勝手に緩みだす。

「・・・有難う。・・・・とても嬉しい。」

君に向かって微笑むと、君は少し視線をずらして、「あぁ、」と口を覆った。
その動作が不思議で俺は首を傾げる。

「どうかしたか・・・?」
「ぃや、なんでもないからきにするな。」

何故かカタコトになった君を更に不思議に思いながらも、これ以上は聞かないことにした。

・・・この花は俺の誕生花。俺のために君が買ってきた、俺の誕生日を祝う花。

花を見つめながらそう思うと、無性に嬉しさと幸せが込み上げた。
君に愛されている、そう言われているような気がして。

「なんか、・・・色もお前のイメージだろ。凛とした青で。・・・・・花屋で、・・・・お前っぽいなと思って。」

君は終始照れているように見える。何だか可愛い、と言ったら怒るだろうから、言わないでおくが。
花屋で俺のために、花を選ぶ君の姿を想像するだけで、俺はもう胸がいっぱいだった。

うれしくて。
しあわせで。
君にそんなに思ってもらえて。

・・・・大好きだ。

「君が・・・・だいすきだ。」

言葉にすると、恥ずかしくて最後の方が少し掠れたが、君に届いただろうか。
そう思った瞬間、がばっと音がする勢いで抱きしめられ、頬を撫でられ、上を向かされた。
一瞬、花を心配したが、さすがに君も、花を守るように抱いたようで、大丈夫だった。

「俺も、・・・好きだ。・・・どうしようもないくらい。」

何かを堪えるように、君は瞳を細め、眉をしかめる。
そして、熱い、あつい口付けが降って来た。

「んっ・・・、ふ、・・・」

今はただ愛しくて、何もかも君色に染めて欲しくて、
俺は瞳を閉じて君を感じた。

しばらくして、銀の糸とともに唇を離す。
熱で、君が潤んでいるように見えた。

君は深く、優しく微笑んで。

「誕生日、おめでとう。」








コメント遅くなってしまったのでお礼とお詫びのSSでした。
清乱さま、土月or吉加小説、とのリクでしたので、勢いで書いた蓮ちゃん誕生日小説でした。
SSネタ探しに誕生花調べてたら、そういや、今日月森さん誕生日じゃないか、と。(遅)
題名のブルーエンジェルはアンチューサの種類の一つで、真実の愛は花言葉です。
今回は加地登場させる時間がなくて、解説してもらえませんでした。(笑)
拍手SSのブルーレースフラワーの話とちょっと繋がってます。
誕生花はいくつもあって迷いました。アンチューサは真実の愛以外にも花言葉が、貴方を信じられない、とかあるんですが、それは聞かなかったことに(笑)
アフリカワスレナグサとも言うので、そんな花言葉がついてもしかたないかな、という・・。
とりあえず、この小説では真実の愛、の意味で土浦さんは渡してます。ご安心を。

清乱さま、いつもありがとうございます!!こんなものですが、貰っていただけるでしょうか・・・・?


&蓮ちゃんお誕生日おめでとう!!!
そしていつも拍手とコメント下さる方々、ありがとうございます!!

応援していただいて幸せです。
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