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その瞳に魅せられて〜Presto〜(前編)

 2009-04-15
土衛小説
【その音に誘われて】

の土浦サイドです。

桐也は色々土浦のこと勘が良い、とか意外と喧嘩も強いな、とか考えたり、想像したりしてますが、
土浦は土浦で色々観察してるんだ、って話です。
また違う角度でお楽しみ下さい。



放課後ふらりと練習室を予約して、俺は何を練習するでもなく弾きたい曲を弾いていた。

気付くと、いつもショパンばかりになってるが、好きなもんは仕方がない。
その日もいつも通り幻想即興曲を弾いていて、一番気分良く弾いてたとこで、ピアノの悲鳴を初めて聞いた。

すぐに異常だと感じて、一つずつ恐る恐る音を確かめる。

…やばい…、今の音はやばい…

案の定、一番下のソが鳴らなくなっていた。

俺はアップライトの蓋を上げて、中を見る。
1本ピアノ線がばっちり切れていた。

ふと、グランドピアノ予約しなくてよかった、という考えが俺の脳裏をよぎる。
グランドピアノの悲鳴なんざ聞きたくない。

…っていうかピアノ線って弾いて切れるもんなのか…。やべー…金やんあたりに壊したな!とか言われそう…

そう思っていると、すぐ左から高めのハスキーボイスが聞こえた。

「あんた、どんなバカ力で弾いてたの?」
「うるせ、…っ…!?」

そういや、さっきから誰かが話しかけてたような気がした。
ファータかと思って何となく無意識に返していたが、…俺に話しかけてたのは俺と同サイズの人間だった。(俺よりいくらか小さいが)

羽付き連中は、練習してるとポンポン出てきて話しかけてくるし、部屋には一人だと思ってたから油断した。

これでは変な奴と思われても仕方がない。

そして、真横で話しかけられるまでその存在に気付かなかった俺もどうかと思うし、

…ってかビビった…

いきなり出現されて、俺がドッキリだ。

ピアノの椅子に膝をかけて、俺の隣で背伸びしてる奴は、学院で見たことがなかった。

赤紫の上向きに無造作にセットされた髪。毛先の方はピンク色にグラデーションしている。
赤紫の薄手の上着に、フードが付いていて、それには薄ピンクのフワフワした毛がついていた。

下は緑色のダメージジーンズ。
首元にはシルバーのヘッドフォン。

今時の自己主張が強い若者が着るような、パンク系の格好だった。

そいつは見た目通り、ズケズケと言いたい放題言ってきた。
第一、ここは制服ありの学校。なんで私服の奴がこんなところにいるんだと、俺が不思議に思っていたら、
そいつの話からヒントが拾えた。

将来有望
見学自由
吉羅理事長の親戚

パズルのピースを合わせるように、
俺はそのピースの向きを左右、上下変えてやる。

この学院の特色は何といってもレベルの高い音楽科があり、
申し分ない練習設備、不定期だがコンクールというチャンス、
何度かある有名音楽家やOBOGが見に来る行事、
生活全てが音楽を目指すものをバックアップする、いわば音楽を目指す者なら知らなきゃモグリな学校だ。

ここを見学するのは大抵来年入りたい受験生か、物好きだが加地みたいに途中から転校してくるやつだろう。
大学院から入る可能性もあるが、校舎が違うから可能性は低い。

ついでに吉羅理事長の親戚だ、何かしら音楽に秀でているのかもしれない。金やんか加地あたりに、理事長は昔ヴァイオリン弾いてた、とかその姉も音楽家だったとか聞いたことがある。

…ってことで高1、2、3か受験生の中3…

中学生には見えないから、かと言って年上じゃない気がするので、同学年か1つ下と言ってみて様子を見ることにした。

すると、当ててみろと言うような顔をしていた目の前の奴が、にや、と口を吊り上げ笑った。

「さぁね。」

見上げてくるワインレッドの瞳は、余裕に満ちていて。

直感で、今言ったどちらもハズレなんだと思った。




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