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刻まれる音は永遠(とわ)に

 2008-09-02

「良い場所とれてよかったな。」

湿った夜の海風が吹く中、少し色黒の肌の、短髪の者は隣の人物に話しかけた。

すると目の前の海面が明るくなり、赤く細い光が音と共に空に登る。

そして一瞬の間の後、赤い大輪の花が夜空に咲き、腹の底に響くドンという音が鳴った。

赤い強烈な光はコンクリートやその上に座る2人の人間を明るく照らし、表情も読み取れるほどの明るさにする。

「あぁ、綺麗だな…」

枝垂れ花火のような金色の瞳の少年は、目を輝かせて言った。

その金の瞳の者を観察しながら、隣のがっしりした体格の、見るからに爽やかなスポーツマンな人物も密やかに笑みを浮かべた。

「お前も負けてない…かもな。」
「…は?…今、何を…」
「なんでもねぇ。…何も言ってないから、いいから花火見てろ、ほら次上がるぞ、…」
「梁、俺は君の言葉の方が…っ」

細身の者が体格の良い人物に詰め寄った途端、緑や金、色とりどりの水面から咲く花に声を消された。
そして闇のスケッチブック一面に、はちきれんばかりの枝垂れ花火が次々に花開く。

大きく、キラキラと金の星が煌めくような枝垂れ柳。
一輪でも贅沢な位なのだが、それが乱れ咲き、この上ないほどに豪華な芸術品になる。
二人はただ、その迫力と美しさに言葉もなく見ているだけだった。
余りの見事な絵画に、思いが言葉にならないのだ。

最後に少し空白ができ、白い煙が風で流れてまた夜空が黒い紙に戻ると、また風船が勢い良く萎むような音が空に響く。

そして今までのものよりも一段と大きい、それこそ火の粉が二人に降り懸かるのではないかと言うほど大きな黄金の枝垂れ柳が、二人の頭上に堂々と姿を見せた。

言葉を無くしたかのように、目の前の金の花に魅入っていた草色の髪の者は、はっと我に返り声を上げた。

「たーまやー!」

その声に応えるかのように、ドン!と壮大な音が地に空に響き渡る。

横にいた水色の髪の者は、何事か、と隣の大声で叫んだ者を目を丸くして見つめる。
その視線に気付いた草色の髪の者は、水色の髪の者が、こういう地元の花火大会で、庶民的に花火を楽しんだことなど無いことを思い出した。

「こういう花火大会では、デカい花火が上がって場の空気を盛り上げたり、花火を褒め称えたりするのに、たまや、とかかぎやって言うんだ。」



「…そうなのか。」
「お前も言ってみるか?」
「…?!、…いや…俺はいい…」

2人のいる防波堤は人気がなかったが、それでも水色の髪の者は恥ずかしがって声を出すことはしない。

代わりに、横にあるシャツの裾をこっそりと握った。

「君とこんな景色が見られるとは思わなかった。」
「俺もだ。」

2人、どちらともなく目を合わせ、そして笑う。
夏の風物詩は
例外なく
恋人たちの胸を
熱くさせるのだろう

熱く暗い海
2人だけの

ドラマティックな時間。

心臓まで響く音は
どこか

隣の人に近づき
脈打つ自分の
音に似て


金の瞳が、夜空の花により再び光を増す時、

目の前の黒い影は、微笑み、静かに重なる。


色とりどりの鮮やかな花と

優しい抱擁

刻まれる口付けと

暑い熱い夏の思い出。


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