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Seiso〜con fuoco 狂うほど愛してる〜

 2008-06-07

女装した月森が笑わないからといって、公衆の面前で口説けと言われた。
断ろうにも、日傘の下から熱い視線が感じられてしまい、どうにも断れなかった。

それに。

…俺が断ったら誉めちぎるもとい、口説く役目は月森の隣の席に座っている、例の怪しい長髪がサラリとやってくれそうで怖い。

「わかったよ!」

ガタンと席を立ち、少し後ろを向く。カメラを気にしてやりたくはないが、完全に背を向けると天羽から苦情がきそうなので仕方ない。

何を言えばいいのかよくわからないまま、言葉を必死に探した。

「ぁー…、悪くないんじゃないのか?」

無意識に髪をかき混ぜながら呟くと、司会からブーイングが。

「土浦くん、それは口説くとは言わないよ…?」

柚木先輩にそう言われ、火原先輩には困った顔をされ、レインは俺の隣で呆れながら溜め息をつく。

…ムカっときた。

「言っとくけどな、口説けとか言われてもすぐにそんな言葉出てくるわけないだろ!?」
「俺にあたるなよ…、そうだな。お前には難しそうだな…」

苦笑いのレインの言葉にカチンとくる。

俺には難しい?

あいつへの気持ちが、負けてると言われたような気分になってきて、何だかそれは許せない。

睨むくらいの勢いで、クルリと月森を振り返り、思いを吐き出す。

「月森…っ!……す…、……………すきだ。」

斜め下を向きながらぼそりと言ったけれど、月森には聞こえたはずだ。

きゃああと客席側から甲高い声が聞こえる。


…何が、とは敢えて言わない。

衣装が、とも月森が、とも…女装がとも取れる曖昧な感じで放置した。

月森にはバレバレかもしれないが。

……。

恥ずかしくて外し気味だった視線を、月森に戻す。

反応はどう返ってくるだろう。

…それだけか、と怒るか、こんなところで本当に言うなと困惑されるか。

「つ…ちうら…」

ところが。

目に飛び込んで来たのは、少し目を伏せて、恥ずかしそうに頬を赤らめる月森の顔。

ほんの少しだけれど、口元が優しく緩んでいる気がする。

これは…

俺は息を飲む。

白い日傘に隠れるように、白いドレスを身に纏った月森は薄く微笑む。ほんのり頬を染めて。

…見せたくねぇ…っ!

俺はあまりにも可愛い月森を、テレビやファンや柚木先輩たちの目に写させたくないと瞬時に思う。

何でか知らないが、月森のこういう顔をほかの奴に見せたら、危険だと感じた。

「おや、笑うと更に美しさが増しますね。」

…ほら、言わんこっちゃない。
色目を使う奴が直ぐに食いつく。

俺はガタンと机を無意識で叩いていた。

「ざけんな。別に似合ってなんかない。」

…誰にも盗られたくない…!

口が勝手に動いてしまって、自分でも何を言ってるかわからなくなっていた。

「ほう?君は彼が好きだと言ったばかりでは?」

睨みつければ、余裕の笑みで返され、俺は抑えが利かなくなる。

「女装なんて似合うかよ、バカバカしい!」

…あんたの趣味や注文じゃないか。

なんでそれを月森が着なきゃいけない?!

まるで月森があんたのものみたいに…!

止められない逆流、
正反対の言葉。

「無理やり言わされただけだ。俺は…」

…止めろ、

止め…

「月森なんか好きじゃない!」


それを言った瞬間、

月森は凍り付きそうな顔をした。

空気が張り詰め、俺と月森の間はただ事ではない雰囲気になる。

月森の傷付いた泣きそうな顔を見て、酷く胸が軋んだ。

言ってしまって、月森の反応を見てからもう遅いことを悟った。

…違う、俺はお前が…
すきなんだ…っ

だが、俺の口は動かないまま。

逃げ出したくて仕方なくなった。

番組途中放棄の前に、柚木先輩が助け舟を出してくれる。

「えーと、そろそろCMだね。CMの後は質問のハガキを開けてみるよ、お楽しみに!」

柚木先輩はそう言った後、チラリと舞台袖を見て俺に合図する。

天羽のOKサインを確認してから、氷みたいに固まってる月森を攫って舞台袖に逃げ込んだ。

そして、周りにスタッフがいるのも気にせず月森を力一杯抱きしめる。

月森は小さく震えていた。俺に抱きしめられ困惑しているのがわかる。

「ごめん、…月森。嫌いなんて嘘だ。…あいつの言葉にカッときて…ほんとサイテーだ…。」

…傷つけてしまった。一番大切なやつを…

「ごめん…っ」

自然と頭を下げる俺をじっと見ていた月森が、やっと話し出すのが感じられた。

…怖かった。自分で傷つけておいて自業自得だが、月森が離れてしまうことが怖かった。

いつの間にか、こんなに好きになってるなんて…
月森の声は、いつもにも増して掠れていた。

「嘘…なのか?…俺は…、俺は…君を好きでいても…いいのか?」

恐る恐る紡がれる控え目な言葉。

…俺の発言でこんなに不安にさせたのか。

俺のくだらない嫉妬のせいで、好きな奴を。
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