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いつもお前だけを思ってる4

 2008-05-01
…マズい。どう考えてもアウトな方向だ。

しかもその上に今しようとしてたことを加えると、言い逃れられる気がしない。

比較的そんなに大人数でなかったギャラリーも、野次馬が増えてザワザワとしだした。

…このままじゃ明日校内新聞に載りかねねぇ…っ

「逃げるぞ!」

フリーズしている蓮の手を掴んで、急いで俺は校舎の中に向かって駆け出した。

「…待て!…何故そっちなんだ?!」

正門の外に逃げたそうな蓮を無理やり引っ張って、校舎に連れ込む。

帰る流れに逆走する俺たちを、驚いた顔で見る普通科と音楽科の生徒達。
多分俺らの組み合わせと騒いでいる現状のせいだろう。

「忘れもんだ!いいからついて来い!」

走りながら、蓮を振り向かずに叫んだ。




そのまま蓮と一緒に、現実から逃避行しつつ家庭科室の隣の調理室に向かう。

俺が全力疾走したために2階の廊下辺りで蓮がバテて、歩いて調理室に向かっていた。

「君は…、速いんだ…っ、…す、こしは俺のことも…っ、っは…」
「悪い、つい本気で走っちまった。」

俺は思わず、フッと笑いが零れる。

「笑い事では…っ、はぁっ…、っく…」
「だってな…」

落ち着くように背中をさすってやりながら、俺は目を細めた。

「行き絶え絶えなお前って、色っぽいだろ?」
「…は…?!」

珍しくひっくり返った蓮の声に満足して、廊下に誰もいないのを確認すると、口は苦しそうなので頬にキスを送る。

「さっきはお預けくらったからな。」

穏やかになった俺の雰囲気に蓮は息を調えながら頬を桃色に染める。

…すげぇそそる。寧ろ今すぐ喰っちまいたい…。
けれど渡したいものがあるし時間もないため、グッと我慢する。

…お前は知らないだろうな、俺が普段どんだけ欲望を抑え込んでるか…

どれだけ欲に溺れた目でお前を見ているか。

知ってほしいような、ほしくないような。

そんな思いを巡らせて、歩きながら見つめていれば、蓮が不意にこちらを向いた。

「…ところで…忘れ物とは…?」
「あぁ、お前追いかけるのに邪魔だったから、鞄やらなんやら置いて来ちまって。」
「…そうか。」

そのまま蓮は俯いて、繋いだままの俺の手を離すことはなく、強くキュッと握り返してきた。

薄く蓮が笑っているのには気付けなかったけれど。



調理室につくとまだ明かりがついている。

鞄も何もかも伊部に預けっぱなしだったので、伊部は帰りたくても帰れないんだろう。

急いで扉を開くと、中で調理台にもたれて立っていた伊部がこちらを向いて真っ直ぐ立ち直す。

「悪いな、待たせた。もう大丈夫だぜ。」
「そう、よかったわ。私はこれから届けに行くの。…仲直りできたみたいね…?」

自分の荷物を持ち、扉から出てきた伊部は、俺と蓮の手元に目をやって、にっこり笑った。

俺と蓮の手はまだしっかり握られたままで…

「っ!!…これは…っ」
「…っ、………」

焦って、赤くなる蓮と同時に手を離すが、時既に遅し。

伊部は慌てる俺達の横をすり抜けていく。

「私も負けないように頑張らなくちゃ、…月森くん、誤解させてしまってごめんなさい。土浦くん、本当にありがとう、それではお邪魔だから退散するわね。」

そう爽やかに言い残して、伊部は風のように廊下に消えていった。

後に残された俺達は、赤くなったり青くなったりすることしかできなかった。

「…見られた…」
「何故扉を開ける前に離しておかなかったんだ…」
「……お前があまりに可愛く握ってくるから離せなくて…」
「…なっ、…何を言って…っ、…」

…本当は心地良くて嬉しくて離したくないと思ってたら、手を繋ぐことがあまりに自然な感じになっちまって…、扉を開ける直前に離すのを忘れてただけ、なんだけどな。


「まぁ、…あいつなら言い触らしたりしないだろ。どっちかっつーとさっきのギャラリーのほうが心配だ。」
「……はぁ……。」

蓮が横で盛大なため息をつく。

誕生日なのに悪いことしちまった自覚はある。

蓮の気持ちを少しでも嬉しい方向に持っていくために、俺は誰もいなくなった調理室へズカズカ入り、調理台の上に置いてある、箱が入った白いビニール袋を持ち上げた。

そして、蓮の方に振り返ると蓮を笑顔で呼ぶ。

「…蓮…、ちょっと来い…。」
「……何だ…?」

蓮は不思議そうに首を傾げると、一応外を警戒してか扉を閉め、俺の方へやって来る。

「…これ、お前にやる。開けてみろよ。」
「…ぇ…?」

驚く蓮に袋を渡すと、蓮は袋の中を少し覗き込み、調理台の上で丁寧に袋から箱を出した。

「これは…?」
「いいから、…開けてみろよ。」
「……あぁ…」


蓮は俺に促されるまま、出した箱をそっと開いた。


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