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櫻花爛漫・希〜のぞみ〜

 2008-04-22

ひとひらひとひら
甘い香の中舞う花よ

柔らかな薄桃色の
長い長い歴史を知る花よ

あいつと会ったのも櫻の下

花びら降る
その場所で


どうして僕らは出逢ったの?
それはきっと絶対的な何か



「柚木、花びら手でキャッチしてみない?」
「花びら…をキャッチするの?」
「うん!捕まえられたら何か良いこと起こりそうでしょ?」

今より跳ね回る無邪気なあいつ、
今より髪の短いあの頃の俺。

「いいよ。競争だね。」

笑顔で笑った俺は、本当の笑顔なんて忘れていた。

良いことなんて起こるわけがない。
いつだって願えば奪われていく。

当たり前のレール
間違いのないゴール

変わらない
変えられない

すべては一つのもののためで、
俺も一つの駒にすぎない。

それでも叶うとお前は信じて
手を…伸ばすのか。




…叶うものか。

ただの願掛けに
熱くなる心は持たない

簡単に捕えられるだろうと伸ばした手

…こういうものは動かない方が向こうから寄ってくるものだ。


ふわりふわり

ほら、捕まえた、…



開けばそこに


薄桃色は無かった。




櫻は感じたかのように
僕を避けていたんだ。






今なら、

お前に会って少しだけ
お前の強さを分けてもらえた俺なら、

捕まるだろうか。

…願ってみてもいいだろうか。


見事なまでに踊り散る
花吹雪に魅せられて

見上げた俺は
手を伸ばす。

恐いほど美しい
一本の大木。

願うなら
俺にも変えられる未来を

願うなら
何にも代え難いお前を


掴みたい。

この手で…


次から次から降ってくるとめどない花の雫

ふわり

手の中に入る。

掌を握りしめ
そっと開くと



桃色のそれは
跡形もなかった




あぁ。


叶えてはくれないのか。
やはり俺では駄目なのか。


未来を夢見たいと思った今なら

捕まってくれる気がしたのに


俺の手には
何もなくて。


ツキンと心が痛んだ。


痛みを感じなかったあの頃とは違う

鈍っていた感覚を呼び覚ましたのはアイツだった

痛い
苦しい

俺は見放されているのか

悲しくて
手を握りしめた…


「柚木!…っと、捕まえた!」

後ろから声
振り向けばお前

まさか
どうして
このタイミングで

お前というやつは
にっこりと笑うんだ


「…柚木どうしたの…?……、えっと…いる?」

手に入らない痛み
どうして
お前ならすぐに
そうやって掴めるのだろう

天に愛されているんだろうか。

お前の優しさは優しさでしかない
決して俺には
悪いようには映らない

何故ならお前は
素直さのかたまりだから

「…いいよ、それはお前が捕まえたんだから、お前が持ってろ。」
「柚木…でも…、いいの?」

俺を心配する
お前の瞳。

気づいていたのか
俺のために取ったのか

熱いものが込み上げた

お前を強く強く包んで
櫻の花びらごと抱きしめた

お前は少し驚いたが、
すぐに俺に身を任せる

「いいよ、お前ごと捕まえるから…」
「俺、逃げないよ…?」
「…知ってる。」

欲しいのは小さな桃色でなく

たった一人のこんなに温かいお前。

「……梓馬、…俺…」

離れたって追い掛ける
捕まらなくても
もう 諦めない

「梓馬が大好きだよ…」
「馬鹿じゃないか…?」
「うん。梓馬バカ。」

満面で笑うお前
泣き笑う俺

マシュマロに似た口づけ

俺のすべては
お前のために

だから俺に少しだけ
笑顔の力をおくれ――



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