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見守られ祈る愛の歌(吉加)

 2008-04-11

こっそりと忍び込む、
僕と貴方だけの空間。

愛おしい貴方に一秒でも早く会たくて、僕は今日もヒラヒラ花に群がる蝶のように貴方の部屋を訪れる。

理事長室。

愛しのプリンス…いやキング?のおわす仕事部屋。

軽いノックをすると、入りたまえ、と背筋がゾクゾクするこえが聞こえた。

嬉しい、嬉しい。

貴方に会えるだけで、…その声を聞くことができるだけで。

部屋に入ると書類にペンを走らせながらも、僕を気にする気配。

「何の用だね?」
「あはは、酷いなぁ、暁彦さん。僕がここに来る理由なんて一つじゃない。」

暁彦さんとの会話は駆け引き。甘い色香を含ませて、ちょっとでも構ってもらえるように誘う。

いつも放課後になり、暁彦さんの仕事が終わる頃に僕はこっそりやってきた。

「…君は…、」

ふぅ、と溜め息が聞こえた。

溜め息つくなんて、そんなにお邪魔なのかな。でも、僕の誘いが効いたって可能性も…

「毎日こんなところにばかり来るよりも、少しでも練習をしたほうが君のためになると思うのだが?」

…うわっ!痛い…

「…わかってます。…でも、ヴィオラは家でも練習できるけど、暁彦さんには学校でしか会えないから…。」

僕にも譲れないものはある。
あまりにも短い貴方との逢瀬。

それがなければ、僕はもうきっと

くるしくて
さみしくて
かなしくて

貴方に焦がれて押しつぶされてしまう。

「貴方に会えないと…、僕は愛が足りなくて…死んじゃうんです、暁彦さん…。」

全て本心。貴方の愛がなければ僕は――

「…―っ、出て行きたまえ…。」

…え?

…暁彦さん

今なんて?

苛ついた、本当に冗談で言っている調子じゃない暁彦さんの言葉。

出ていけ?

デテイケ――?

全てが。部屋が。視界が。

体が。心が。

心臓が。呼吸が。

凍りつく。


涙を流すこともできない。


何故?

どうして―?

いらない?僕は暁彦さんに必要とされない…?


ぐらりと視界が、体が揺れた気がした。


硬い生地、腕、瞳と同じ色のネクタイ。

気づくと貴方の中にいて、引き寄せられて最初は優しく、だんだん激しく求められた。

「…ふ、ん…、暁…彦さん?……僕は、…いらないんじゃ…」

見上げると、言いにくそうな暁彦さん。

「…私が…悪かった…、謝ろう…すまない。」

本当に申し訳なさそうな、暁彦さんらしくない顔。
…どうしたんだろう…。


そんな少し憂いを秘めた瞳で僕を見る、暁彦さんの表情もとても素敵だけど、
僕は何が起こったのかわからない。

するとやはり言い難い雰囲気で、暁彦さんがぽつりぽつりと口にする。

「その…、妖精がいた、と言ったら…君は信じるだろうか…、」
「…妖精…?」
「…あぁ、」
「この学院のシンボル的な?」
「…あぁ…。……出て行きたまえ、と言ったのはそれに対してだ…。」
「…っ!、さっきまで居たの!?っていうか、暁彦さん見えるんだ?」
「…見たくないのだが。」




さっきまで居たらしい妖精は、暁彦さんを僕とのことでからかっていたみたいで。
頭に来た暁彦さんが妖精に言った言葉は、妖精が見えないし声も聞こえない僕には、僕に対しての言葉にしか取れなくて。

僕の勘違い。

…よかった。

暁彦さんに本気であんなこと言われちゃったら、さすがの僕でも立ち直れないとこだった。

…そして、もう一つ。

妖精が見える体質の暁彦さん。

沢山妖精の話が聞けるかもしれない。

嫌がってあまり話してはくれないけど、少しの話でも、姿も全く見えない僕にはとても嬉しいこと。

妖精は僕と暁彦さんの仲を知っているみたいだから、今は暖かく見守っていて欲しい。

妖精に見守られる仲、なんてなんだか素敵じゃない?

いつか会えたらいいのに、そう思いながら、暖かな暁彦さんに包まれて、優しく髪を梳かれ、目を閉じた。


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