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〜Seiso〜堕天の証

 2008-02-12

ソファーに横たわりながら、君が好きだと気づいた途端に、俺は目の前が火照ってきた。

すると、生まれて初めて愛しているという言葉が当てはまってしまった人が、俺の部屋を突然訪れる。

訪問内容を聞いたは良いが、玄関の戸を開けてしまったら、二度と俺は戻れないような予感がした。

この扉一枚の向こうには君がいる。

そう思った途端に体がズクンと熱くなった。

君を好きだと意識する度に、下半身の熱が再燃している。

何故俺の体はこんなことに…?

こんな姿、君に見せられない。

会いたくない、
でも会いたい。

矛盾した二つの気持ちが俺の心を悩ませる。

会いたくない

でも、この扉の向こうには君がいて、

俺のことを待っている。

会いたい
会いたくない
会いたい

花占いのような不安定な感情。

確か彼は回覧板を届けに来たと言った。

彼は回覧板を回しに来ただけ。

大丈夫、彼は義務で来ただけだ。
だから少しだけ。

顔を見るだけだ――


そう自分に言い聞かせ、扉を開けてしまったら、やはり俺を心配して会いに来たらしい瞳が見えた。

やっぱり…、やっぱりダメだ。

君が愛しくて
俺が情けなくて

こんな状態で会うのは間違っていた。

体が熱くておかしくなってしまう。

そう感じて扉を閉めようとしたけれど、
それは叶わなかった。


君の真っ直ぐな瞳に射抜かれて、俺は君に言いたいことがあったことを思い出す。


好きだ、とやっとの思いで口にすれば、

君は驚いて固まって、それから押し潰すように乗り掛かってきた。

俺の心臓は飛び跳ねる。

俺は…君が好き

君も…俺が…

君の激しい口付けが俺の唇に落ちてきて、瞳を閉じた。

激しいけれど…

全く嫌なものではない。

役などでも何度か土浦と口付けていたが、
今の土浦の口付けは今までと違った。

衝動的に、何かを伝えるように必死に唇を押し付けていたかと思うと、

愛しむように

優しく
優しく

軽い啄む口付けが繰り返される。


くすぐったいほど甘い甘い口付けが俺も嬉しくて、

俺からも、土浦に吸い付くように口付けに答える。

愛してくれているキス。

役の時の生々しい、見せつけるようなものでなく

歩くついでのように、気まぐれに攫っていく口付けでもなく

あの人のように無理やり顎を掴まれ、舌をねじ込まれて犯されるでもなく――


あの時の凍えるような感覚を思い出し、俺は肩が震えた。

けれど、土浦の唇がまた触れるとそれは治まっていった。

君の口付けは、安心する…

髪を君に撫でられ、甘やかされるような唇の触れ合いに、視線に、酷く溶けてしまいたいと思った。
初めて、君と俺の愛しいという気持ちが、重なったキスだった。



不意に土浦の手が俺の胸元に伸びる。

俺は彼のジャケットを軽く上から羽織ったままだった。

土浦はジャケットを脱がせようと手を動かすが、俺はジャケットをかけてもらった理由を思い出す。

この中には…

俺の鎖骨の辺りには

あの人に刻まれた

堕天の烙印があった。


最後まで奪われた訳ではないけれど、

俺はあの人に好きに触られて

舐められて

もうキレイではなくなってしまった。


そう思って土浦から身を隠すように、

ジャケットにかけられていた土浦の手を払い、ジャケットの前を右手で合わせてギュッと握りしめた。

「すまない…。助けてくれたことはとても感謝している、けれど…見せたくない。俺はもう…キレイではないから…」

申し訳なくて土浦から目線を外していると、驚いた顔をしていた土浦は低めだけれど、俺を怯えさせないような優しい声で言う。

「ごめんな、…お前を傷つけたい訳じゃないんだ…。お前は…俺に触れられるのも怖くて汚されるから嫌か?」

苦い顔で、でも優しく笑う君を見ていた俺は、君が俺に触れたいのだと気づく。

「違う…。君が…気持ち悪くて嫌ではないかと…、他の人に触られた体なんて…」
「お前はきれいだ。気持ち悪いなんて思うはずがない!…お前はずっときれいなままだっ…」

ガバッと土浦は俺を抱きしめてくれる。

強い腕が、俺に触れることを戸惑ってなどいないことを証明する。

「お前に教えてやりたいと思ったことがある。」

俺の肩に顔を埋めていた土浦は、顔を上げて俺と視線を絡ませ、真っ直ぐに見つめた。

「こういう行為は、相手を汚したり堕とすためのものじゃない。愛してたり好きだって気持ちを伝えるためにするもんだ。」

俺はどきりと胸が高鳴る。

君が俺に触れたいのは…
愛を伝えたいから…?

嫌な思いばかりしていたから、そんな考えには今まで至らなかった。


「胸、見せてくれないか…?」

真剣な瞳に尋ねられて、俺は頷いた。

土浦がジャケットを開くと、少し目を細めて、

俺の鎖骨の赤い痕の上に強く吸い付いた。
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