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秘密の心(後編)
2008-01-23
咳ききったように話を始めた土浦の話の内容に、俺はなんと返せばいいのかよくわからなかった。ただ、彼の思いは聞いてあげたい、そう思った。
「…籠なんかに閉じ込められて…、自由に生きられたらもっと幸せだったかもな…。」
苦しそうに屈んで強く目を閉じ、悔やむように話す土浦に、俺は練習室の中に入って、できるだけ気を使った声で話す。
「…俺がもしそのインコだったなら、君や君の御家族に世話をしてもらい、相手をしてもらって、…幸せだったと思う。…君のピアノも弾かせてもらって…」
俺の話の途中で、土浦は急に声を荒げた。
「…あの日…、アイツが脱走してピアノの上歩いてて…、俺は鍵盤に傷が付くからって俺はアイツを思いっきり怒鳴って籠にぶち込んだんだ…!…そのせいで弱ったんじゃないかって…。俺がっ…、」
土浦がバンとすごい音を立ててグランドピアノの開いていない上部を叩く。
「俺が…怒鳴ったり乱暴に籠に閉じこめたから…」
俺は驚いて土浦の側に駆け寄った。
「楽器に当たるなんて…、止めてくれ…!」
楽器には罪はない。土浦らしくない行動に俺は慌てた。
乱れた土浦の心を落ち着かせようと近くに寄ると、彼は俺を見るなり腕を引っ張ってきて、痛いくらいに力を入れられて抱きしめられた。
「…楽器なんか優先したから…生きてるアイツの楽しみ奪っちまって…。また狭くて嫌な鳥籠の中に入れられて…。俺があんなことしなければっ…!」
「…すまない…土浦。辛いことを思い出させてしまったな…」
俺は耳元で聞こえる初めて聞く彼の震えた声に、地雷を踏んでしまった自分が情けなく思えた。
こんな時に彼を追い詰めてしまうなんて。
俺の片口に目元を押し付ける土浦の髪を撫でながら、俺はもう片方の腕を彼の背にまわす。
俺に弱さを見せてくれる君は初めてだ。
俺が支えられるものなら支えたい。
「…土浦。インコの歳はいくつだったんだ…?」
「…インコにしちゃ長生きだったが…」
「そうか、…なら君のせいではない。寿命だったんだろう…。…君にそんなに思われて、インコはきっと幸せだっただろうな。」
土浦の気持ちを思いやれば、俺の声は自然に優しくなっていた。
土浦の少し硬い深緑色の髪を撫でて、俺は口元を緩める。
「…月森…」
ぎゅっと俺に抱きついてきて、甘えてくる土浦が不謹慎にもかわいいと感じる。
君のためならいくらでも、肩も胸も貸していたいと思う。
俺にだけ話してくれた、君の弱音。
頼って欲しい。
少しでも、俺が君の支えになることができたら。
「さっきの別れの曲は、インコへのレクイエムだったんだろう?…きっとインコにも伝わっている…。」
「…そう、…だと、…いいが…、な、…」
震える土浦の肩を撫でて、先ほどのピアノを思い出す。
抑えた感情はきっと君の痛み、苦しみ、後悔。
音には正直に表れていた。
君のインコを思う
愛情
謝罪
思い出
願い
別れへの悲しさ
様々な気持ちも、
祈りも。
音楽は届けてくれるだろう。
別れは新たな始まり。
思い出を一つ増やして、土浦がまた強く歩き出せるように、
俺は――
きっと愛された小鳥も、
願っているから――。
俺にだけ話してくれた、君の弱音。
頼って欲しい。
少しでも、俺が君の支えになることができたら。
「さっきの別れの曲は、インコへのレクイエムだったんだろう?…きっとインコにも伝わっている…。」
「…そう、…だと、…いいが…、な、…」
震える土浦の肩を撫でて、先ほどのピアノを思い出す。
抑えた感情はきっと君の痛み、苦しみ、後悔。
音には正直に表れていた。
君のインコを思う
愛情
謝罪
思い出
願い
別れへの悲しさ
様々な気持ちも、
祈りも。
音楽は届けてくれるだろう。
別れは新たな始まり。
思い出を一つ増やして、土浦がまた強く歩き出せるように、
俺は――
きっと愛された小鳥も、
願っているから――。
