君とひと夏の

 2009-07-18
君に誘われ、夏祭りに行くことになった。

人混みは好きではないが、君がいるならそれも変わってくるだろう。

生まれて初めて浴衣というものを買い、
祖母に教えてもらって、着付けて行く。
紺の浴衣、紺の巾着。

君はどんな顔をするだろうか、
似合わなくはないだろうか…

下駄がカラコロと鳴り、待ち合わせの鳥居に付いた。

少しも待たずに、君は来た。

黒い甚平…。
照れくさそうに、袖の中で腕を組んでいた。

「梁…」

呼べば君は諦めたように、恥ずかしそうに笑って、俺の前で止まる。

「よぉ、…悪い、待たせたか…?」
「いや、今来たところだ。」

俺もつられて笑って返すと、君は目を細めて俺の手を取った。

「…浴衣…、似合ってる…。」

満足そうに首を傾けて笑う君は、どこかあどけなくも見えて、余計に愛しさが増す。

「…そうか、…有り難う。…君も似合っている…」

見とれるなと言う方が無理だろう。
色黒な肌がチラリと見えて、どきんと胸が鳴った。

「行くぞ。…蓮。」
手を引っ張られて、夜の祭りに繰り出す。


いつもと違う君と
たくさん遊ぼう

俺の知らないことを
たくさん教えてくれ

ひと夏の暑い熱い
思い出をつくろう――


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太陽、そよ風、そして君。(コメント返し)

 2009-06-26
屋上から見下ろす、グラウンド。

日差しは高く、暑く。

頭が、髪が熱を帯びるのがわかる。

・・・あぁ、こんなに熱いと、ケースに入っていても、楽器が熱くなってしまうな・・・

グラウンドではサッカーボールで遊ぶ、数人の生徒。
何気なく練習中に目が行って、気付けば・・・探していた。

けれど、思い描いた人の姿は無く。
俺は何をしているんだろうと、校内に戻るためにグラウンドから顔を背けた、
その時。

大きな数人の男子の歓声で、俺の意識は再びグラウンドに落ちた。

どうやら、一人が上手くゴールを決めたらしい。
ゴールを決めたと思われる人物は、茶色がかった髪に、細身の体つき。

・・・確か、日野や加地のクラスメイトではなかっただろうか・・・
名前は・・・

そう考えていると、急に目の前が闇に包まれた。

!?・・・なんだ?

暖かいもので、目を覆われているようだ。恐らく・・・手。

耳元で、低く響く、聞き慣れた大好きな声。

「俺以外、見てんじゃねぇよ。」

甘く、熱い吐息が、耳元をくすぐった。
俺の心臓が跳ね上がる。

「りょ、・・・りょう・・・・?!」
「・・・当たり。」

君は笑って答える。

目を大きな手で覆われたまま、後ろの君に話しかけた。
背中にはぴったりと君の体温。

・・・俺の早鐘のような鼓動が聞こえてしまわないだろうか。

羞恥が俺を襲った。

「・・・梁、離してくれ・・・、もういいだろう・・・」

恥ずかしい。
グラウンドからこちらを見たら、誰か俺達に気付いてしまうかもしれない。

風が、俺の赤いラインの開襟シャツの、首元を撫でた。
梁の手を避けようと、彼の腕を掴んだ。

目からも、俺の手からも、君の体温。
太陽に照らされて、少し熱くなった、太くてしっかりと筋肉のついた、
ピアニストの腕。

「俺以外見惚れないって言うまで、離さない。」

俺の鼓動が、熱が、

俺が掴んだ手の中の、脈打つ君の腕が、

俺をオカシクする。

「梁・・・っ」

熱から逃げるように、空いている左手を前に伸ばすと、冷たいフェンスに触れた。
思わず掴んだ、冷たい棒。

その俺の手の上から、君の手が重なった。

・・・梁・・・っ

右手も左手も、君に触れて。

捕らわれて、包まれて、高鳴って、視界も奪われて。
君に触れたいのに、顔が見たいのに、出来ないもどかしさに苦しくなる。

・・・何もかも君のものだ。俺は君以外見ていないというのに―

「りょう・・・っ」
「・・・ったく、んな声だすなよ。別に苛めたいわけじゃねぇから。」

俺がよっぽど困った声を出したのだろうか、梁が苦笑気味に目を覆っていた手を外した。
重なった左手も、ずらされ、俺は自由になる。

ふと、視界が開け、すこし残念な気がした。

・・・残念・・・?

胸がまた一つとくんと鳴る。
俺は君を振り返った。

「俺は、・・・君以外、生活する上で見ない、と言うのは無理だ・・・」
「んなこと解ってるさ。」

少し怒っているような声で、苦笑しながら返す君。
だが、怒っている、というよりも、君が少し・・・残念がっている時にする癖。

恥ずかしさが襲うが、真っ直ぐに君を見る。

・・・しっかりと君に伝えたい。

「だが、・・・君以外に・・・見惚れたつもりはない。・・・・・・・君だけ、だ・・。」


君がいとしい
君がたいせつ
誰よりも・・・いちばん、きみが・・・・


・・・伝わっただろうか・・・・?


君は一瞬、目を丸くして、そして、

・・・・・何故か吹き出すのを堪えるように笑った。

俺が笑われる理由がわからなくて、眉を顰めると、

「いや、悪い。・・・カッコイイな、お前・・・。」

俺を見つめる君の目が優しく、深い色に変わる。

「・・・俺も、お前だけだ、・・・蓮。」

優しく、暖かな笑顔。
あぁ、俺の一番好きな、君の表情だ。


そう思っていたら、視界がまた暗くなった。

今度は君の胸の辺りに、俺の頬が当たる。

包まれる君の腕の中は、とても心地よくて、ドキドキする。

・・・今度は君の鼓動が聞こえるだろうか・・・・

先ほどの体制は君の顔が見えないし、自由が利かなくて少し不便だった。
それに、今度は君の音が聞こえやすい。


どくん、どくんと音が聞こえる。

君の音、俺の音。
ひとつにとけあう、ふたつのおと。


「やっぱりこちらの方が良い・・・。」

俺はポツリと呟いて、君の薄黄色のシャツを握った。

君は不思議そうに尋ねる。


強く抱きしめられて、

嬉しくて、気持ちが良くて、俺はそっと目を閉じた―。









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カスミソウ〜切なる願い〜(佐々木→土浦×月森+オリキャラあり)

 2009-04-28
どうして…、どうしてなんだ…。

俺は1年の頃から土浦を見てたのに。

ずっと…憧れであり、気の合う仲間で、友達で、側にいると最近はドキドキして。

それがなんなのか、わからないワケじゃないけど、ずっと土浦には言えないままだった。

いつか土浦は俺の方を見てくれるんじゃないかって、そんな馬鹿みたいなこと考えて。


あぁ、ほんと、今更だなあ…

たまたま訪れた屋上で、土浦がある人を背中から抱きしめているのを見てしまった。

思わず扉を閉めて、見なかったことに俺的にはしたかったけど、
土浦が抱きしめた思い人は、見間違えようのない綺麗な空色の髪をしていた。

あぁ…、美人で、頭が良くて、なんていうか、俺なんかとは格が違って、色白くて、クールでかっこよくて、立ち姿も、演奏も優雅で、本当に本当に、完璧な王子様って感じだ。

俺じゃ、逆立ちしたってかなわない…

ちょっと泣きたくなってきた。

ヤバい、俺、ホントに土浦が好きなのかもしれない…

アイツがもしいなければ、土浦は俺に気付いてくれたんだろうか。
俺にも、ちょっとはチャンスがあったんだろうか。

1年の頃は、土浦の隣で笑うのは俺だった筈なのに、クラスも変わって、部活にも出て来なくなって。
土浦は俺からどんどん離れて行った。
そして、アイツはあっと言う間に土浦を虜にして、攫ってしまった―。

…好きなのにっ…
こんなに…っ、好きなのに…土浦ぁぁぁあ!!

両手の甲で、必死に目から溢れる汗を拭うと、目の前に何か差し出されたのに気づいた。
それは、ぼやけているが人形のようだった。

…なんだ?

そう俺が思うと、良く響く低めのハスキーボイスが、胸に響いた。

「…悔しいのか。」

人形の向こうに、黒い髪で色白の普通科男子生徒が見えた。

そいつは、尚俺に人形を突きつける。

「憎いのか?」
「…え…?」

突きつけられて、手の中に落とされた、それはよく見たら藁人形だった。

「…は?」
「…それでお前の望み、叶えればいい。」

藁人形で願いを叶えるって…!!
俺はそいつを改めて見た。

「俺は学校七不思議研究会同好会の者だ。」
「いや、オカルト部だろ、聞いたことある。なんか怪しい事研究してる集団だって…」
「七不思議研究会同好…」
「なんでもいいよ。何だ、これ。」

俺は多少顔をしかめて、人形をそいつに見せた。
こいつ、確かオカルト部の部長だった気がする。
感情の浮かばない顔して…。
普通に笑って、怪しいこと言わなけりゃ、女子がほっとかないような綺麗な顔してんのに。

漆黒の髪、漆黒の瞳。
俺なんかよりずっと美形ってやつだ。

そう考えていたら、何だか自分が惨めになった。

俺は絶対にアイツにはかなわない、そう言われてる気がして。

「…好きなのか、土浦梁太郎が。」

…うわああああ!フルネームでスゴいこと言ったー!

「愛しているのか。」
「止めてくれ〜〜!なんかすげー恥ずかしいし、本人そこにいるから!」

…愛とか全く関係ない顔して、サラッと言うのかこの部長!!

俺は小声でオカルト部長に注意する。
すると、部長は生気の無い真顔で、(ホント顔だけは綺麗なのに)金槌と五寸釘らしきものを両手に取り出した。

…って、五寸釘って!!

「これを使って、恋敵を呪えばいい。」

気持ち悪いほど綺麗に響く良い声でそう言い切り、今まで仏頂面だった部長は、初めてにこりと彼なりに笑った。

…そのタイミングで笑うかーっ!!

可笑しいくらいオカルト部長のその笑顔は美しい。女子が黄色い声を上げそうだ。

俺は恐がるべきか、驚くべきか、突っ込むべきか、微妙なハザマだった。

とかいろいろ考えてるうちに、藁人形も、金槌も、五寸釘も、全部手渡されていた。

「って、俺こんな…っていうか、こういうの見られてると自分に跳ね返るんじゃ…」
「俺が後ろを向いていれば大丈夫だ。…土浦梁太郎の隣が羨ましいんだろう?自分のものにしたいんだろう?…なら、恋敵がいなくなればいいだろう。」

…そんな…

心が冷えていくのがわかった。

「お前は望んだだろう?…アイツがいなかったら、と。アイツさえいなければ、また自分のところに土浦梁太郎が戻ってくるのではないかと。」
「ちがっ…、」
「…なら、呪えばいい。消してしまえばいい。愛しい人を奪っていったやつを。」

胸が苦しい。何かがつかえたように。息が出来ない。

…アイツサエイナケレバ…

土浦の笑顔も、腕も、隣も、心も、

俺の存在を思い出してくれる…?

『…佐々木。』

土浦の声が、笑顔が、俺の涙が溢れた。

あぁ、大好きだよ。
お前にもっと近づきたい。


「さあ、思いを、奪われた悲しみを、ぶつければいい。」


そう言って、オカルト部長は背を向けた。




俺は、土浦がアイツに微笑みかけた時の、胸が抉られるような、叫びだしたくなるような、激しい嫉妬心を思い出した。


藁人形を壁に衝動的に縫い付けて、左手で釘を人形の左胸に立てて、右手の金槌を振り上げて――



ふと、幸せそうに笑ってアイツを抱きしめる、土浦を思い出した。

アイツもきっと幸せそうに―



ガンッ。金槌がコンクリートに落ちる音と、振動がした。



右手は空をつかみ、
俺の目からは滝のように涙が零れた。


左手も、もう全てを投げ出していた。



…だって、これをしたら、アイツ死んじゃうかもしれないだろ…?



一瞬でも構えた自分が恐ろしくなった。



涙は止まらない。
何が悲しいんだっけ。

俺はその場にしゃがみこむ。



「どうした?土浦梁太郎を取り戻したいのではないのか?」

全く事に動じない声が背中側から聞こえた。


「違う…、俺は…。こんなことしても、誰も、俺も…嬉しくない…。俺は月森のこと嫌いじゃないし、土浦には幸せで笑っていてほしい。俺は隣にいられなくてもいい、アイツらが幸せならそれでいい…っ。」



悲しくて、寂しくて。


でも、不思議とアイツらの笑顔を思い浮かべれば、そこは温かい気がした。





オカルト部長は切れ長の目を細めて、
その白い手で俺の前の藁人形を拾い、胴体にそっと唇を触れさせた。


「人を呪わば穴二つ―。それがお前の答えなら、これと俺はもう必要ないな。」


微かに唇は弧を描いて、部長はもう一度怪しく美しい漆黒の笑顔を見せた。

そして、階段の手すりを華麗に乗り越え、手を離して、
この屋上近くから一番下の階の床が見える、何もない空間にフッと消えた。


「ちょ、部長…!?」

呆気にとられ、いろんなショックで固まった俺だが、
さすがに死んだんじゃないかと不安になり、ヨロヨロ立ち上がって、手すりの向こうを見下ろした。

だが、怪しい血の痕とか、そんなのはきれいさっぱりなかった。


「…消えた…。」



何だったんだ、と思っていると、屋上の扉が開く音がした。



「…佐々木?」
「あ、…」

急いで俺はひどい顔を拭った。
そして、大きく息を吸って、振り返る。


「よっ、土浦。屋上デートなんかしてるから、俺どうしようかって迷ってたんだって。」


上手く笑えてるかな。目が赤いとか突っ込むなよ…?

そう願いながら、笑みは崩さないようにする。


「なっ、…」
「佐々木、お前見て…ん?お前…」

隣で…あれ、赤くなってる?綺麗なアイツと、
やっぱり気ーまわしすぎの土浦と。

「心配するなら、隣の恋人の心配しとけよ。何処の誰が狙ってるかわかんないんだから。」

…本当に、危なかったんだから。
まぁ、心配しなくてもお前は、

「はぁ?!何言ってんだよ。お前・・。」

「俺さ、二人のこと応援してるから。じゃ、お幸せに〜。」

きっと全力で守るんだろうから――

ヒラヒラと手を振って、からかって茶化した感じに、逃げ去ることにする。

「佐々木っ!!」

照れたお前の声は、俺にはまだ辛いけど、
きっと、これでいいんだ。

俺は心の底から、そう思ってる。







大好きだったよ、・・・土浦。



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〜ブルーエンジェル〜真実の愛

 2009-04-24

屋上の扉を閉めると、さわさわと春の風の匂いがした。
目の前にはフェンスに寄りかかる君。

「何の用だろうか。」

放課後、俺は突然屋上に呼び出された。
一緒に練習したい、とも何とも聞いてはいない。

「何の用って・・・、お前・・・」

振り返りながら、君は眉根を寄せた。

・・・俺は何か気に触ることを言っただろうか。

「特に何も言っていなかったから、2人で練習でもするつもりかと思ったのだが、・・・違ったのか。」

俺は近くのベンチに、ヴァイオリンケースと鞄を置いた。
すると、荷物を置くために背を向けていた君に、後ろから捕まった。

「・・・忘れてんのか。」

右耳に吐息交じりの低音が響き、身体の芯がぞくりと震える。

・・・忘れている?・・・何を・・・?

土浦と約束でもしていただろうか。
だが、そんな記憶はなかったし、スケジュール帳にも特に書いてはいなかった。

「・・・何がだ・・・?」

記憶に無いものはどうしようもなく、君に嫌われそうな気がして不安になった。

君を振り返ると、困ったような、だが口元は優しく、何とも言い難い表情をしている。

「・・・土浦・・?」

「今日、お前誕生日だろ。」

君は俺を後ろから抱きしめながら、優しい瞳でそう言った。

「・・・・・、・・・・・あぁ、そうだっただろうか。」

頭の中が真っ白になりながら、俺は今日の日付を思い出す。
4月24日、確かに俺の誕生日だ。

「そうだっただろうか、って・・・お前自分の誕生日忘れるなよな。」

苦笑して、君のぬくもりが離れていく。
少し寂しくて、俺は君の方へ向き直った。

「学校で祝われる事などなかったから。」

そう告げると、「なら、一番乗りだな。」と君は嬉しそうに言った。
君はもう一つのベンチに移動し、自分の荷物を探る。
その荷物の影から、白いビニール袋を手にして、こちらへ戻ってきた。

「ん。やるよ、お前に。」

目の前に差し出されたビニール袋には、鉢植えの青い花が入っているようだった。

「俺に・・・?」

俺は受け取り、そっと白いビニールを開いてみる。
目の覚めるような鮮やかな青い花びら。花弁は5枚で、中央のおしべやめしべの部分は白い。
花びらはほんの少し先が尖っていて、小さな花が密集して咲いている、可愛らしい花だった。

「あぁ。誕生日だから。前にお前に花貰ったことあったし、そのお返しだ。」

君は照れたように、少し斜めを向いてそう言った。

・・・俺は、そんな風に照れる君も、なんだか好きだ。

そう思いながら、手の中の花を眺めた。
すると、鉢に札が差してあることに気付く。

「・・・・アンチューサ・・・?聞いたことの無い花だな。」
「あぁ、アフリカ原産の花らしい。何か湿気と暑さに弱いらしいから気をつけろよ。日当たりの良いとこ置いて、水はあまりやりすぎない方がいい。寒さには強いみたいだけどな、お前みたいに。」

君は、照れながらもしっかりと育て方を教えてくれる。
花など育てたことがない俺のために、色々聞いてきてくれたのだろう。

・・・・それはいいが・・・

「俺みたい・・・?」
「あぁ。お前寒いの強いだろ。夏とか暑いの苦手だけど。・・・・・・後、そいつ、お前の誕生花だから。」
「・・・・誕生花・・・?」
「知らないのか?なんか誕生日ごとに毎日花が誕生花として何種類か振り分けられてるんだ。」

あまり花にはそこまで興味はなかったため、聞いたことくらいしかなかったが、
これが俺の誕生花だ、と言われると、何だかまた違って愛着が持てる。

俺は、青色の鮮やかな花を眺めながら、わざわざ土浦が誕生花を探して買ってきてくれた事を嬉しく思った。
頬は勝手に緩みだす。

「・・・有難う。・・・・とても嬉しい。」

君に向かって微笑むと、君は少し視線をずらして、「あぁ、」と口を覆った。
その動作が不思議で俺は首を傾げる。

「どうかしたか・・・?」
「ぃや、なんでもないからきにするな。」

何故かカタコトになった君を更に不思議に思いながらも、これ以上は聞かないことにした。

・・・この花は俺の誕生花。俺のために君が買ってきた、俺の誕生日を祝う花。

花を見つめながらそう思うと、無性に嬉しさと幸せが込み上げた。
君に愛されている、そう言われているような気がして。

「なんか、・・・色もお前のイメージだろ。凛とした青で。・・・・・花屋で、・・・・お前っぽいなと思って。」

君は終始照れているように見える。何だか可愛い、と言ったら怒るだろうから、言わないでおくが。
花屋で俺のために、花を選ぶ君の姿を想像するだけで、俺はもう胸がいっぱいだった。

うれしくて。
しあわせで。
君にそんなに思ってもらえて。

・・・・大好きだ。

「君が・・・・だいすきだ。」

言葉にすると、恥ずかしくて最後の方が少し掠れたが、君に届いただろうか。
そう思った瞬間、がばっと音がする勢いで抱きしめられ、頬を撫でられ、上を向かされた。
一瞬、花を心配したが、さすがに君も、花を守るように抱いたようで、大丈夫だった。

「俺も、・・・好きだ。・・・どうしようもないくらい。」

何かを堪えるように、君は瞳を細め、眉をしかめる。
そして、熱い、あつい口付けが降って来た。

「んっ・・・、ふ、・・・」

今はただ愛しくて、何もかも君色に染めて欲しくて、
俺は瞳を閉じて君を感じた。

しばらくして、銀の糸とともに唇を離す。
熱で、君が潤んでいるように見えた。

君は深く、優しく微笑んで。

「誕生日、おめでとう。」







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揺れるお前と心と風と5

 2008-08-04

元から積極的な方ではない蓮は、俺の言葉を聞いて、文字通り目を点のようにした。

「…、何を言ってるんだ君は…、こんなところで、こんな状況で…、できるわけ…」
「なら、もっかい漕ぐか…?」

我ながらセコいと思いながらも、今更無しにもできない。どうやってでも今日は蓮からしてもらいたい。

俺が落としていた腰を上げ、再び漕ぎ始めるそぶりを見せれば、蓮は驚いたように鎖を強く握った。

そして、眉根を寄せて綺麗な顔を歪めながら、俺をじっと睨むかのように見ていたかと思うと、蓮はふと視線をさまよわせ、また俺を真っ直ぐに見上げる。

迷うのも無理はない。蓮の言うとおり住宅地内の公園だし、既に高校生男子二人が二人乗りしてる時点でいろいろ目立つ。
更に揺れているブランコの上でキスをするということは、少しばかり技術やら配慮やら必要とされるだろう。

そんなことを考えていた俺は、立っているうちに無意識にブランコを漕いでいたらしく、蓮に声を出すきっかけを与えていた。

「もうっ…、…止めてくれ、…する、から…」
「わかった。」

自分でもニヤリと笑っているのを感じながら、俺は蓮の前にしゃがんでやる。

「ん。」

俺は目をつぶり、揺れに体を任せて、蓮からキスがくるのを待った。



…と見せかけて、薄目を開けてみる。

すると蓮の真剣な顔が見えた。
覚悟を決めたのか、蓮の喉がこくりと動き、口をキュッと結ぶ。

蓮の視線が俺の口だけに集中しているのは、何だか嬉しいものを感じる。
俺の為に懸命に応えようとしてくれる蓮を、この瞬間、独り占めしているんだと。

…お前の愛を、お前から感じさせてくれる…

そんな美味しいシチュエーションはそうそう無い。

今か今かと待っていると、蓮の薄い唇は、少し距離が近づき、ビクリと近づくのを躊躇った。

その繰り返し。
近づいては少し離れ、
近づいては動きを止める。

なかなか唇が合わさるところまで行ってくれない。

蓮にしてみれば、歯をぶつけそうで怖いのかもしれないし、自分からはあまりしないから恥ずかしさもあるかもしれない。

…焦らすなよ…、無意識だろうけど。

期待と興奮故の焦燥感。
蓮に関しては、俺は本当に余裕のない男になってしまう。

“まだか”とか、“多少痛くても大丈夫だ”とかいろいろ言葉が溢れそうになるが、ぐっと飲み込んで、たった一言だけ、風に乗せる。

「…れん。」

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